今年の7月半ば、階段から転落して一時意識不明で救急搬送、左肘骨折で入院・手術までの顛末を書き記している。
その1:事の顛末
https://www.mi77.jp/entry/2023/08/26/155724
その2:皆のコメントで初めて起こったことを知る
https://www.mi77.jp/entry/2023/10/13/144907
病院から自宅へ戻る。
救急搬送先から退院後2日間は次女の所にいたので、久しぶりの?我が家である。まさか左腕を骨折して三角巾で吊った状態で帰ってくるとは思わなかった。
まずは片手で荷物の整理をする。
階段から転落した当日着ていた服が出てきた。
キュロットスカートや靴下など、下半身に身に着けていたものはそのまま洗濯機に。そして上半身に身につけていたカットソー2枚と下着は、脇の縫い目あるいは正面から真っ二つに切られていた。以前テレビで見たことがあるが、救急搬送された患者は一刻も早く必要な措置を施さなくてはなくていけないため、着ている服に躊躇なく医療スタッフがハサミを入れる。自分の場合は首とか腕とか上半身だったんで、その部分の服や下着が切られているのだろう。
それらを見た瞬間、
「ああよかった。高い服じゃなくて」
「どうせこの下着、脇がたわんで来たからそろそろ捨てようと思ってたし…去年の暮れに買ったばかりのものじゃなくて良かったー」
といった言葉が浮かんで来た。
そうだよな。夏物だから全部合わせても1万円でお釣りくるくらいだし。高い服着てる時は気をつけないとなぁ…
いやいや
そうじゃないでしょう
いつもならそのままやり過ごすところに、その日は小さな違和感を感じてしばらくそこにとどまってみた。
「高い服でなくて良かった」は確かにある。でもその他にも何かある。なんだろう…あまりすっきりしない、むしろ"良くない"感じかなぁ…
ただただそれを感じてみる
やがて浮かび上がってきたのは
「情けない」だった。
ああ情けない。自分の不注意でこんなことになって。みんなに迷惑かけて。
せっかく楽しみにしていた2日目の講座や、その後の推しバンドのライブも自分からオシャカにしてしまって行けなくなった。
本当にいい年をして…ああ情けない、情けない…
そうやってひとしきり「情けない」を感じ尽くすと、別のものが立ち現れてきた。
それが言葉になるまで、しばらく待ってみる。
すると「悲しい」という言葉になった。日頃の自分が感じにくい感情なのに…意外だ。
何が悲しいの?
「確かに安い服だし、2シーズンは着てるので惜しくはないけど、こんな形で突然服の役目を終わらせることになるなんて」
「このうちの一枚は次女が一緒に買い物に行った時に、別の赤いサマーニットの下に着るといいよと言って、選んでくれたんだっけ…その気持ちを台無しにしちゃったなあ…」
なんだか…悲しいなあ
この間、時間にしたらどれくらいだったか…十数分くらいだと思う。
途中で「そうは言っても救急外来の正しい措置だよ」「これくらいで済んだんだから良しとしなくちゃ」などと様々な声や考えも湧いてきたが、「そうだね」と一旦受け入れて脇へ置き、「悲しい」にフォーカスし続ける。
感情は感じ尽くすと流れていくという。湧いてきたものや現れてきたもの、様々なものが心のなかにうごめいていたが、やがてそれらは消え、静かになった。
ありがとう。今までありがとう。
服だったモノたちはただの布になり、資源ゴミの日に処分されていった。
些細なことだったが、今まであまり感情は感じないようにしてきた自分にとっては、何か特別な体験だった。
そうこうしているうちに、入院当日を迎える。
お産以外では初めての入院。ワクワク?8:不安2というなんともフワフワした心持ちだった。
(その4に続く)